Bitter


久々の学校は、一つの始まりの中で水をかけられたように笑ってる生徒達とその声をやけに眩しく感じさせる。


私は隣の亮太に皮肉を言いながら、その眩しさから目を逸らして笑った。


教室の扉を開くと、数秒、クラスの新しい顔に視線が集まる。


私はそこで息を深く吸って、吐き出した。

そうやって「疲れる覚悟」をした瞬間、後ろから肩をたたかれた。


『レーイー!うちらまた同じクラスだよー!』


黄色い声をかけてきたのはは去年同じクラスだった女友達だった。

マキ、ユリ、アコ。

マキとは一年生の頃。同じグループにいた。



『うっわほんとー?!超嬉しい!』

『昨日どうしたの?いなかったじゃん』

『せっかくプリとろうとしてたのにー』

『元B組でね!』

私は風邪だった旨を伝えながら、教室内の女子達を横目で見やった。

皆同じように身体に力を入れて一生懸命笑っている。


『レイ、今日の放課後ヒマ?』


顔見知り程度の子は何人かいたが、彼女達もそれぞれ離れたところで知らない子たちと同じ作業をしている。

それを確認して目の前の3人に笑顔でうなずく。
頭の中でリスクを計算する。

『じゃあ今日こそ4人で行こうよ!』
ユリが声をはずませる。

私は力いっぱいの笑顔でそれに同意する。

これで香坂麗のこのグループへの仮所属が完了した。
この手のかけひきは、相変わらずゲームのようだ。
それを楽しめる者もいれば、ゲームオーバーをひたすら恐れて気が気でない者もいる。

私は間違いなく後者だ。
というか、何度かすでにそれを経験していたりするので、そうならざるを得ない。

いつも気付くと崖っぷち。
下を見た途端、真っ逆さま。
ドボン。


高校生活をなんとしても平穏に切り抜けたい。その思いが私をますます慎重にさせた。

グループやプリクラなんて、くだらないのは百も承知だ。
でも私達には必要な輪である事は、どうしても否めない。


私はとりあえず自分の“位置”が確保できた事を確認し、
一息ついた。


亮太はというと、
離れたところでもう新しい友達とギャーギャーふざけている。

男子はいいよな、と羨望の眼差しを送った。

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