Bitter
…………沈黙……
いぶかしげに、ちらっと目をやると、
先生の涙は消えていた。
私が彼に惹かれるわけがわかった。
月のような哀愁の瞳。
その光は空を照らす。
雲を照らす。
大海をも照らす。
昼間はただ謙虚に
夜は暗黒と静寂の中、生きる。
見つめずにいられるはず、ない。
と、その時。
その瞳がこっちを向いた。
(わっ。)
『鍵…』
『え。』
『何で君が持ってんの。』
『やっその…朝拾って…』
『まぁいいよ、それ、やる。』
『?』
『屋上は俺と琢磨…新任教師が管理することになってるから、その鍵は琢磨のだけど、この仕事はいつも俺がやってるし。落としたあいつが悪い。』
『でも…』
『その代わり、さっきのナシな。』
あ…そゆこと。
『はい。でも私自由にココに来ていいんですか?ここは高瀬先生にとって、なんてゆうか特別な…』
『言いにくくない?』
『え?』
『“タカセセンセイ”って。噛みそう。“高瀬”でいいよ。敬語も、ここではいい。』
『でも』
『決定』
『…はい。』
(や……やった!(小さくガッツ))
『好きな時くれば。別にさっきのは…』
(さっきのは…?)
『花より男子のラスト思い出してただけだし…』
(…………嘘だろ!!!!)