Bitter

『ここ、落ち着く。確かに必要かもしれない。』

私が夕焼けを見ながらつぶやくと、高瀬も口を開いた。


『…“かわたれどき”』

『え?』

『古語でさ、このくらいの夕方とか、明け方の薄暗い時のことを言うんだ。
“かわたれ”…“彼は誰”?って暗くてよく見定められないくらいの時。』


『へぇーなんかロマンチック。』

ちょっと想像してみる。

すすき野原で、たそがれていると、ガサッと音がして、振り向くと彼がたたずんでいるの。夕焼けの中…あれ?

『……ん?』

『どうした?』

『見えるよね、人。』

『?』

『だって今くらいの夕方か明け方でしょ?十分明るいし誰か識別できる気がする。』

『………確かに。』


『もっと遅い時間のこと言うんじゃない?』


『確かに……………ふ』

ははっと高瀬は笑いだした。



『生徒に教わっちまった。そうだよな、普通に考えたらわかるのに…』



—あいつが教えた事を、何の疑いもせず今まで…





『あっごめんなさい何か偉そうに私…っ』


『や、ありがとな。』



『『・・・・・・・・・・・・・・・。』』


『・・・・・あ。』

そのまま空を見ていると思ったら、突然高瀬が不思議な質問を投げかけてきた。




< 33 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop