Bitter
『ここ、落ち着く。確かに必要かもしれない。』
私が夕焼けを見ながらつぶやくと、高瀬も口を開いた。
『…“かわたれどき”』
『え?』
『古語でさ、このくらいの夕方とか、明け方の薄暗い時のことを言うんだ。
“かわたれ”…“彼は誰”?って暗くてよく見定められないくらいの時。』
『へぇーなんかロマンチック。』
ちょっと想像してみる。
すすき野原で、たそがれていると、ガサッと音がして、振り向くと彼がたたずんでいるの。夕焼けの中…あれ?
『……ん?』
『どうした?』
『見えるよね、人。』
『?』
『だって今くらいの夕方か明け方でしょ?十分明るいし誰か識別できる気がする。』
『………確かに。』
『もっと遅い時間のこと言うんじゃない?』
『確かに……………ふ』
ははっと高瀬は笑いだした。
『生徒に教わっちまった。そうだよな、普通に考えたらわかるのに…』
—あいつが教えた事を、何の疑いもせず今まで…
『あっごめんなさい何か偉そうに私…っ』
『や、ありがとな。』
『『・・・・・・・・・・・・・・・。』』
『・・・・・あ。』
そのまま空を見ていると思ったら、突然高瀬が不思議な質問を投げかけてきた。