Bitter
『なぁ少女、合唱曲の中で何が一番好きだった?』


『・・・は?えっいきなり?!
えっと…いろいろやったけどやっぱり私は…「翼をください」。かな』


『やっぱ?俺も好き。今突然頭の中で流れてさ。』


『なんか、歌ってて一番きもちかったかも。
って言っても中学入ってからあんまり真面目に歌わなかったけど。ふふ。』

『俺も。・・・じゃ、今歌おうか。』


『・・・・は?』


『飛ぶんだよ、大空に。』


『え!?!?ひゃぁっ!』


なんと高瀬は私をひょいっと持ち上げた。



急に顔が近くなる。


顔の温度が急上昇していくのがわかる。


『えってか何、このままほうり投げたりしないよね?!』

『お望みならそうしてもいいけど。』

『結構です!てか重いでしょ?降ろしていいよ!!』

『ダメ、歌ってから。』


高瀬さん、キャラ違うってば。

『いまー私のーねがーいごとがー。』

女生徒をお姫さま抱っこして、真顔で翼をくださいを屋上で熱唱って…

何、この男意味がわからない。おもしろすぎる。


『かなーうーなーらばー♪ほら歌えよ』

高瀬に乗せられしぶしぶ歌いだす。

『『翼がーほしーいー♪』』


すると高瀬は私を持って動きだした。


高瀬は背が高いから、その高さまで持ち上げられて風をきって動かれると、
本当に飛んでいるみたいだった。


『キャーーッ!あはは!』


久しぶりに本気で笑った。

こんなに楽しいと思ったのは何年ぶりの事だろう。


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