Bitter
その後、また少し話をした。


誰かに恋をしてるんですか と尋ねたら、

彼は静かに頷いた。


一応笑って対応したけど、

高瀬の目を見ることはできなかった。



膨らむ気持ちを自覚した。






* * *





バイトが終わり、真っ暗な家に帰ってベッドに倒れこんだ。


あの、別世界と思われるような場所での時間を反芻する。




抱き上げた時の高瀬の手、

憂いを秘めた瞳、

低くて優しい声…



しかし


高瀬がそれらを本当にあげたいのは、私じゃない。


私じゃない。



枕に顔をうずめる。





「すごい、遠い人。」


彼はうなずいた後、ぽつりとつぶやいた。




こんなに夢中にさせておいて、ずるい。

なんて自分勝手な事を思ってみる。



彼の心を独り占めする、
あなたはどんな人?

高瀬を焦がす

あなたが羨ましい。


恨めしい。





< 36 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop