Bitter
梅雨の季節になった。
軽くなったのは制服だけだ。
私はぼんやりする頭を頬杖で支え、雨でぼやける窓からの景色をみている。
何が見えるってわけでもない。
ただ、見ている。
でも、雨の日の空って目を痛めるのはどうしてだろう。
目頭を押さえながら体の向きをかえた。
アコと目が合う。
なぜか静止する。
笑え、私。ただ口角あげればいいだけ。ほらいつものように…ほらっ…
そう思うのに、私の視線はアコから逃げてしまった。
…またやっちゃった。感じ悪い…。
いつからか、私は器用さを失っていた。
友達とうまくやるための、必要最低限の器用さ。
目が合えばそらし、
話しはじめても話題が浮かばない。
自分をコントロールできない。
別の人間を動かすみたいに、笑顔一つ作るのも一苦労だ。
今までもその症状は時折見られたが、最近は徐々に病気に蝕まれていくように頻度が上がってきた。
『レイも弁当食おーぜい!』
アコもユリもマキも、気付かないフリをしてるけど、きっと何か思ってるはず。
顔色をうかがっては、一人焦っていた。