Bitter
キィッと金属音の鳴る扉をあける。
高瀬はいつものように、こっちに背を向けてあぐらをかいて空を見ていた。
黙って隣に座る。
『あぁ、大丈夫かお前。倒れたって聞いたけど。』
『うん、たくさん寝たから。』
『そうか。』
沈黙。
私たちは、並んでいつも別々の事を考えている。
うん、それでいい。
『じゃぁ私バイト行くね。』
『あぁ、もうそんな時間か…じゃぁ、気ーつけて。』
『うん。』
また私は扉をあける。
その時だった。
『香坂。』
振り返ると、高瀬が何かひょいっと投げてきた。
それは購買のパンだった。
前、私が好きだといった、コロッケの。
『ちゃんと食ってけよ。』
『あ……りがと……。』
高瀬はいつも昼は食べないのに、わざわざ並んで買ってくれたのかな。
なんだか、
泣きそうになった。