Bitter
『麗ちゃん!』
翌日学校に行くと、カナが駆け寄ってきた。
『もう体大丈夫??』
『あー…うん。運んでくれたんだってね。…ありがと。』
カナにお礼をいうなんて初めてだ。
カナもそれにちょっと驚いた後、嬉しそうにはにかんだ。
その時、カナの後ろにいた亮太と目が合う。
昨日の事を思い出して、咄嗟にそらす。
あの後また馬鹿みたいな話をして、普通に別れたのだけど、やはり少し気まずい。
カナ達とそんなやりとりをしてると、急に亜子達に腕をひっぱられた。
『れいー!!昨日倒れたんだってぇ?!』
『マジ大丈夫?!』
『超心配したよぉーっ。』
昨日のトイレの会話を思い出すと、どうしても本音に聞こえない。
それでも空虚な笑顔を浮かべる小心者な自分がいた。
『もう大丈夫っありがとーっ。』
『それならよかった!・・でさー、相談なんだけど・・ちょっと来て来てっ!』
三人が目配せして、今度はベランダに引っ張っていく。
わけのわからない私は言われるがまま導かれた。
『ほらユリー早く言えって』
どうやらユリから話があるらしい。
もじもじして、たっぷりとグロスが塗られた口を開く。
『えっとぉ、レイってぇ亮太君と幼なじみじゃん?亮太君の事いろいろ教えてくれない?』
しばらく、言われた台詞の意味を理解するまで時間がかかった。
『・・・・。えっ亮太ってあの亮太だよね?えっユリあいつ好きなの?!』
『しっ声おっきいってば!』
『ごっごめん・・でもどこがいーの?!』
『えーなんかぁ、前ちょっと電車で会って話してたんだけどー、優しいし面白いしー、結構かっこいーしい、何かそれからいつのまにか目で追うようになってって感じー?』
身をくねらせて照れながら話すユリを、亜子達は微笑ましく見ている。
『かわいーユリー!だからぁ、うちらは全力で協力しよーねっ。ねっレイ!』
『あ…うん。』
私は昨日の事を思って、返事にちょっとつまった。
そんな様子を見逃さなかったようで、彼女達は疑いの核心に触れてきた。