Bitter
ボールを持ち上げ、手に力を込めたその時だった。

カナと目が合った。





“レイちゃん…他の子たちと違うと思ったから…”




脳裏をよぎったいつかのセリフにハッとして、思わず手首のコントロールを狂わせる。

ボールはユリのもとへ、てんてんと転がった。




嫌な沈黙が流れた。





一瞬が何倍にも感じる、重い静けさ。





それをアコの笑い声が破る。




『あはは!レイー空気読もうよー。』





笑いながら怒ってる。
それが声色から伝わってくる。






『でもほら…パス…順番だし…。』


『はぁ?』



その時職員室に行っていた先生が戻ってきた。

『チーム決めの紙もってきたわよーパス練やめーはい整列!』




皆がボールを持って中央に集まる。


アコがバスケットボールを蹴飛ばした。

私は無言でそれを拾いに行ってからそこに合流した。




カナを見る。
目で“大丈夫?”ときいてみる。

カナは腕を押さえながら、ニコッと笑った。



よかった、この子はまだ私を信じてくれている。



視線を感じて振り向くと、アコ達が冷めきった目で私を見ている。

私の大嫌いな目。


また鼓動が速くなった。



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