Bitter
『強さって何?』
私は高瀬に問い掛けた。
高瀬は何があったか聞き出そうとはせずに、
じっと押し黙った。
そして一点を見つめてこう言った。
『定義なんてねーよ。』
『え?』
『強さとか弱さに、定義なんてない。
一人一人が違う基準持ってんだよ。』
『‥そっか。』
『でも一つ言えることは…
誰もが強がってる。
それはイコール弱いって事じゃない。悪いことでもない。
それをやめたら、誰も生きていけないんだよ。』
私は高瀬の言葉をかみしめて、ゆっくり高瀬の方を見る。
彼は視線をそらさず続けた。
『一人として、まったく同じ基準のやつはいない。
だから‥他人から見てそれが“虚勢”とか“逃げ”でも、本人にとっては本当の強さだったりするのかもな‥。』
彼はそう言い、瞳を閉じた。