Bitter

『強さって何?』


私は高瀬に問い掛けた。


高瀬は何があったか聞き出そうとはせずに、
じっと押し黙った。

そして一点を見つめてこう言った。



『定義なんてねーよ。』




『え?』


『強さとか弱さに、定義なんてない。
一人一人が違う基準持ってんだよ。』




『‥そっか。』




『でも一つ言えることは…
誰もが強がってる。
それはイコール弱いって事じゃない。悪いことでもない。
それをやめたら、誰も生きていけないんだよ。』





私は高瀬の言葉をかみしめて、ゆっくり高瀬の方を見る。


彼は視線をそらさず続けた。


『一人として、まったく同じ基準のやつはいない。
だから‥他人から見てそれが“虚勢”とか“逃げ”でも、本人にとっては本当の強さだったりするのかもな‥。』



彼はそう言い、瞳を閉じた。




< 52 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop