Bitter
『えっと。』

『今そこから出てきたよね。』
『・・はい。』

冷たい汗が首筋をつたう。

『え、香坂屋上になんで入れるの?』

『あ、あの!こないだ鍵をたまたま拾ったんです。今、その、高瀬先生に返しに・・。』
『返すだけなら職員室にいけばいいじゃん。』
『屋上に出てみたかったんです。』

咄嗟に浮かんだ言い訳で何とか切り抜けようとするが、藤田先生の様子もどこかおかしい。

何度も階段の方をちらちらと見ている。

不思議に思って、覗こうとしたときだった。

後ろから高瀬が扉を開けてきた。

『香さ・・あれ、琢磨。』


藤田先生は高瀬の顔を見た瞬間にやりと笑った。

『おいおい、君、若い子連れ込んで何やってたのかなー。』

『何もしてねえよ、それよりお前の方こそ、来客だぞ。』


え?っと言って高瀬の視線の先をたどると、階段の踊り場から華奈がこちらを見て立ち尽くしていた。


『・・・・・・え??』



藤田先生は豪快に笑って、高瀬の肩に手を置いた。

『はっはっは!まぁ共犯者同士ガンバロウではないか!』

『誰が共犯だボケ。』


どうなる事かと思ったけれど、明らかに動揺している藤田先生がおかしくて、私と華奈は目が合うと、くすくすと初めて微笑み合った。
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