沫雨恋愛
「‥‥‥‥。」


「‥‥‥‥。」




微妙な沈黙がつづく‥





あたしも一ノ瀬も‥外を見ることもなく


ただうつむいて黙っていた。






‥普通なら好きな人とふたりっきりで観覧車に乗るとかさ‥


すごいドキドキなんだろうけど‥



いや‥ドキドキしてるのはしてるんだけど‥






別 の 意 味 で









「‥あのさ‥一ノ瀬‥」


あたしの方から沈黙を破った。


「ん?」

一ノ瀬はうつむいたまま答えた





「わ‥笑わないでね





あたし‥









高所恐怖症なんだよね‥」










あたしの足は観覧車に乗ったときから小刻みに震えていた。


それも‥てっぺんに近づくたびに震えが増していく‥


しかも握っている手には汗かいてるし‥





(‥ばか薫‥!)


薫はあたしが高所恐怖症だって知っている。



知っていて、わざと乗せたんだ‥


< 18 / 71 >

この作品をシェア

pagetop