沫雨恋愛
「‥じつはさ‥」


うつむいていた一ノ瀬があたしをまっすぐ見た。




一瞬どきっとした














「俺も高所恐怖症なんだよね‥」










「‥え?」




予想もしない一ノ瀬の発言にびっくりした。




「ほんとのこと言うと‥さっきから心臓バクバクいってる‥」


そう言って笑う一ノ瀬の顔はかなりひきつっていた。











「‥ぶっ」




「わ‥笑うなよ‥!」


「ごめんごめん
一ノ瀬を笑ったんじゃなくて

あたしたちふたりして高所恐怖症なのに観覧車に乗ってるって‥

なんか笑えてきちゃって」



「‥たしかに‥ ははっ」


一ノ瀬の顔がひきつった笑顔から自然な笑顔に変わった。







「なにやってんだ俺たち!
観覧車乗っても景色楽しめなきゃ意味なんじゃんなー」


「景色どころか絶対下見れないよね!」





「「‥ぷっ あははははははは‥」」





あたしと一ノ瀬は声をそろえて笑った。



笑ったおかげで緊張が一気にほぐれた。





「一ノ瀬が高所恐怖症って‥なんか似合わない!」


「似合わないってなんだよ(笑)」


「てか地上までまだかなりあるよ!どうしよ!」


「こーなったら揺らさないように‥ぜったい動かないしかないな」


「あと止まらないことを願うしかないね」



「不吉なこと言うなよ~(笑)」

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