風にキス、君にキス。



そう悪戯っぽく笑う雄大先輩の顔が、なんとなく懐かしかった。



「…じゃあ、推測してみたの言ってもいいですか?」


「え?」


「まず、平日は来る時間帯が遅いのに雨の日は早い。あと体つきからして間違いなく運動部。しかもかなりハードな」



そう言うと、先輩達は顔を見合せ始めた。



「すげーな…」


「やっぱ頭の回転は日向のまんまだな」


「部員の数から考えると…少人数で成り立っのはそんなに思いつかないから」




そこまで言って、再び考えた。




…そうだ。少人数なんだ。



サッカーでもバスケでもハンドでもなく…








「…陸上、とか?」







…時間が、止まったようだった。



先輩達の静かな視線から、俺はその答えを確信していた。




「…俺は、陸上部だったんですか?」


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