風にキス、君にキス。



…陸上部。



声に出してみると、ほんの少し震えた気がした。




"懐かしい"でもなく



"温かい"でもなく




壊れそうな程に脆く儚く、だけど大切に思える。





「…そうだよ」



雄大先輩が、静かに頷いた。



「日向。お前は陸上部のエースだったんだ」



…俺が?




「お前は、俺達の"風"だった」



…か…ぜ?





―――「風になること。」


「風?」


「走ることは、風になること。



…ある人がね、以前にそう言ってた」





柚の言葉を、思い出していた。




それと同時に、不意に頭をよぎったのは。



「っ…!」




――――…青空の、断片。



微かに耳に残る、歓声。




「日向ぁぁ…っ」


「頑張れっ」



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