風にキス、君にキス。
「柚ちゃん、片付け…」
「大丈夫です!あたし一人でやりますっ」
「え、でも…」
「皆さんは先に着替えちゃってください」
笑顔を作って、そう言って。
…一人になった後、再びグラウンドを眺めた。
白いラインを引いた、地面。
地面に転がった、ストップウォッチ。
紐を引っ張って拾い上げると、あたしはそのまま白いラインの端っこへと歩いていって。
…中距離、長距離の"スタンディングスタート"を構えてみた。
「よーい。
…なんてね」
おかしくもないくせに、一人でくすくすと笑った。
無性に悲しかった。
無性に孤独だった。
「…っ」
ジャージの袖で、零れ落ちそうになった涙を拭うと。
…もう一度スタートを構えて、がむしゃらに走り出した。
「ーっ…」