風にキス、君にキス。
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「柚ちゃん?」
「あ、うん。何?」
「ぼんやりしてるけど…大丈夫?」
「うん。平気」
友達の亜美ちゃんにそう言われて、あたしは軽く自分の頬を打った。
…しっかりしなきゃ。
ぼんやりしてちゃ…いけないんだ。
「はい、席についてー」
「あ。教育実習生!?」
「きゃー格好いいっ」
新しくやってきた数学の教育実習生に、クラスの女の子達が色めきたつ。
…日向に憧れの視線を注いでいた子達も
告白して想いをぶつけた愛ちゃんでさえも
暗く沈んでいた教室は、日向がいた時とあまり変わらぬ明るさを取り戻していた。
…あたしはそれを、ただ見ているだけだった。