風にキス、君にキス。
"もう、いないんだよ"
その言葉は柚の心に、深く染み付いて離れなかった。
そうだね…
…もう…あなたはいない…
まるで透明な風のように…あなたは去っていったんだ…
「それより、仕事に集中しないとね」
「…うん。そうだね」
「本当に柚の自然で綺麗な英語、羨ましい!昔から得意だったの?」
「ううん。本当に全然…」
…日向に、教えてもらったんだ。
その言葉を飲み込んで、柚は窓からの景色に目を遣った。
…八年前。
不器用ながらも、確かに毎日を精一杯生きていた。
忘れるには思い出があり過ぎる。
――――…君のいた、思い出が。