風にキス、君にキス。
"諦めないで"
"あたしは…諦めたくないよ。
日向が生きることを。…日向が走ることを。"
"生きてる限り…希望はあるんだよ?"
柚。
…柚。柚、柚…
「…っ、ごめん…」
先生が去って…誰もいなくなった病室で思い出すのは、柚のことばかりだった。
あれだけ傷つけたくせに、俺はどこまで身勝手なんだろう。
…柚の、着ていたジャージ。
柚の、皆のいた部室。
柚が俺を見てくれていた、グラウンド。
…戻りたい。
凄く凄く、戻りたいんだ。
"日向君が、希望を与えて欲しい。"
「…っ」
俺は両手を使って、ゆっくりと右足を持ち上げた。