風にキス、君にキス。
拓巳Side
風の行く先
――――春、あいつと出会った。
…初めて会った時も、あいつは走っていた。
「…?」
「んー…まあまあ、だな」
入学早々、っていうか入学式直後。
…当然中学の時から続けている陸上部に入る気満々だった俺は、グラウンドを見ておきたくて。
一人グラウンドの土を踏んだ、はずだったのに。
…先客が、いた。
「…」
「…あ、すいません。勝手にグラウンド入っちゃって」
足で土を軽く蹴っていたそいつは、俺に気付くとはっと顔を上げて。
何の悪びれもなく、さらっとそう言った。
あまりにあっさりした、爽やかなその雰囲気に面食らった。
「…いや、それ俺に言われても…」
「…ん?」
「俺もさっき入学したばっかだし」