風にキス、君にキス。
…その整った顔立ちには、確かな見覚えがあったことを次の瞬間思い出していた。
「あ。」
「…ん?」
「お前、新入生代表…だったよな?」
「ああ、そういえば」
入学式の初めに、成績トップ入学者による新入生代表挨拶がある。
…それを確か、やっていた…
……ってことは、成績トップだったんすね。兄さん。
「…」
「お前、名前何?」
「あ。…輝崎拓巳」
「ふーん。陸上部に入んなら、よろしくな」
そう軽やかに言うと、奴は再びグラウンドを走りだした。
お、おい。待て待て!
「待った!」
「あ?」
「名前名前!お前の名前は何なんだよ?」
聞き逃げしてんじゃねー!
俺も鞄を置いて、グラウンドを走り始め。
…奴の後を、追った。