風にキス、君にキス。
ウォーミングアップを、少し皆よりも多めにやってから。
日向は軽く、グラウンドを走りだした。
目の前に広がるその光景が、やっぱりまだ少し夢のようで。
…ぎゅっと、頬をつねった。
「何やってんだよ」
「み…見てたの?」
「夢じゃないって」
立ち止まった日向は少し手を上げて、あたしに向かって軽く振った。
「柚さーん、起きてますか?」
「っ…」
「寝呆けてないで、ちゃんと見てろよ?」
「う…うるさいっ…」
なんで涙が出てきそうなの?
…幸せ、だから。
あまりに大切だから。
強く腕を振って、力強い足取りで駆け抜けてゆぐ風゙が
あまりに透明だから…
…綺麗で…
それ故に儚くて…