風にキス、君にキス。
二人入部してきた一年生も、やっぱりトラック競技者で。
一人は短距離、もう一人は中距離。
だけど一年生は合宿には参加しない。去年のあたし達もそうだった。
「楽しみ?」
「んー…少し面倒」
「あたしは楽しみだな。皆と合宿…憧れてたんだ」
「合宿ではマネージャーはかなり大変だけどな」
それでも良かった。
それでも皆のためなら頑張れるよ。
「へへ」
「何笑ってんだよ」
「…幸せだなって」
呆れたように小さく笑う日向の腕に、久しぶりにぎゅっと抱きついた。
人気のない道だけど、外でこんなことしたら振り払われるかな。
…そう思った、けど。
「…っ」
「…やっぱ柚、小さいな」
いつの間にかあたしは日向の腕の中にいて。
…強く、抱き締められていた。