風にキス、君にキス。
…だけど。
「あ、大丈夫だよ」
「…え?」
「俺が見てるから」
拓巳があたしに近付いてきて、そう微笑んだ。
「でも…」
「いーって。多分あのコース柚にはキツいし。
…それに」
声の大きさを落として、囁くように言った。
「あいつも、柚に心配や迷惑を掛けたくないだろうしさ」
「拓巳…」
その優しさや気遣いが凄く嬉しかった。
だから少し不安は残るものの、あたしは拓巳に日向を任せることにした。
「ありがと」
「ん。」
「…おい、拓巳。早く行くぞ」
日向が軽く走りながら近付いてきて、拓巳の腕を引いた。
「飛ばしすぎんなよ」
「わーってるって。…じゃな、柚」
「いってらっしゃい」
冷たいスイカを、用意しておこう。
そう思いながら手を振って、皆を見送った。