風にキス、君にキス。
「食べやすい大きさに切ってね」
「はいっ」
ユースホステルの管理人のおばさん(ペアレントさんと呼ぶらしい)と一緒にスイカを切りながら、改めて夏が来たことを実感していた。
…スイカに付いた水滴が涼しげにきらりと光る。
一年は早い。
光陰矢のごとし、とはよく言ったものだと思う。
「去年はマネージャーさんなんていなかったけどねぇ。今年は助かるわぁ」
「あ。ありがとうございます」
ペアレントさんは50歳くらいのおばさんで、なんとなく日向のお母さんに雰囲気が似ていた。
そのせいか…結構人見知りするあたしも、すぐに親しんでいた。
―――――練習の合間に、おやつタイム。
…皆でスイカを食べた。
「お疲れ様です」
「わースイカっ」
「あのコースきつかったな…」
「俺はまだまだ余裕ですけど?」