風にキス、君にキス。



拓巳はともかく、先輩達まで日向にすがっているのは少し悲しい。



…でもそう言いつつ、あたしもちゃっかり教えてもらう。



雑談広場にある大きな机は、あたし達陸上部に占領されていた。




数学、英語、古典…もう何でもありの手付かずの宿題にため息をつきながらも、日向は教えてくれた。



「…柚は?何やってんの?」


「この長文を和訳…しなきゃいけないんだけど」



とある文学作品の和訳。



あたしが辞書と少ない知識を駆使して作った文章にちらりと目を通すと、日向は言った。




「…ふーん」


「え?」


「柚、結構才能あんのかもな」



口の悪い日向がそう褒めてくれたのは、初めてのことで。



思わず目を見開いた。



「…んえ?」

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