風にキス、君にキス。
カタン、とあたしの向かいの椅子に腰掛けて。
…日向はシャーペンを取ると、軽く和訳を修正していった。
「直すべき所もあるけどさ…柚の和訳、自然でいいな」
「ほ…本当!?」
「ん。
…ここは名詞みたいに訳してみ。うまく繋がるから」
「えと…」
日向に従って、もう一度訳してみると。
…ジグソーパズルのピースのように、欠けた何かがはめられて章がぴったりと出来上がった。
「あ、出来た!」
「な?」
凄く嬉しかった。
今まであまり意識していなかったけど…英語、結構好きなのかもしれない。
「ねぇ、本当に才能あるかな?」
「調子には乗んな。才能なんて努力してしまえばほとんど関係ないんだ」
それは日向のくれたアドバイスの中で、一番心に残った言葉だった。