風にキス、君にキス。
打ち上げ花火よりも前に…儚い線香花火が完全に尽きる瞬間を、あたしは見届けていた。
ぽつっ…と一塊の火の粒が地面に落ちる。
その次の瞬間にはもう、ドンッという地響きのような音がして。
…見上げれば、真っ赤な花火が空に散っていた。
「わ…」
「たーまやー…なんてな」
「夏ですね」
気が付けば隣にいた日向もそう先輩に笑いかけてから、あたしを見た。
「…久々だな。花火」
「うん…っ」
綺麗なもの程儚いって言うけれど、それは花火を見ればよく分かる。
ずっと空に残ってはくれないから…だからこそ余計に、美しく思えるんだ。
「てか…一日目でこんだけ盛り上がっちゃって大丈夫なんですか?」
「あとの三日間は特に何もないけど…まぁ頑張ろう」