風にキス、君にキス。
この地球という名の星に
この時代に
この場所に
この足を持ち名前を持ち
かけがえのないものに出会い
かけがえのない人に出会ったことを。
…どんな絶望の波に呑まれそうになっても、それだけは後悔しないから。
「もう…分かってんだけどな」
足に目を遣って、そう呟いた言葉に。
「…え?」と柚が反応した。
「や、なんでもない」
「何よ…気になる」
「蚊が多いから、そろそろ中に入れって言ったんだよ」
俺はそう笑って、柚の腕を引いて立たせた。
「っ…日向は?」
「俺もすぐ入るから」
柚は少し考えるような表情を見せたあと…こくん、と頷いた。
「…分かった。明日も早いから、よく休んでね」
「ん。…おやすみ」