風にキス、君にキス。
「うん、一年の時に比べてだいぶ伸びているな」
二年の、秋。
懇談のために担任の先生と向かい合って成績表を囲んでいるのだけど。
…確かに、(他の科目はともかく)英語は一年の時に比べてぐんと伸びていた。
それだけでかなり嬉しくなった。
「どんな方向に進みたいと思ってるんだ?」
「とりあえず英語を使う仕事につきたいとは思ってるんですけど…」
…うーん。具体的な何かがない。
そう唸るあたしに、お母さんも担任もため息をついた。
「柚、そんなんじゃダメじゃない」
「英語を使うとはいっても、職業によって学部も違ってくるんだ。
文学としての英語を学ぶなら英文科、言語として学ぶなら外国語学部とかね。
…せめてそのどちらかには決めておきなさい」
「はーい…」
知らなかった、と思いつつ。
…とりあえず、頷いた。