風にキス、君にキス。
この手の中に
―――…誰かが言いました。
光は、自分の中にあるのだと。
闇を歩くには…それに気が付きさえすればいいのだと。
日向が自分の光を見つけて…歩いて行くと言うのなら。
―――…きっとそれが、あたしの゙幸ぜなのです。
「もっとしっかり腕振ってみ。その方が楽に走れる」
「はいっ」
…三年の、春。
一年生と二年生を指導する日向や拓巳の姿が眩しかった。
部長の座は雄大先輩から、しっかり者の拓巳に譲り渡され。
…一年生が五人入ってきたおかげで、部員数は九人。
まぁまぁ、毎年あまり変わらない部員数をキープ出来たから良しとするらしい。
「…日向先輩、すげー教え方うまいよな」
一年生のそんな呟きが聞こえてくる今日この頃。
…毒舌ばかり吐いていた日向も、ようやぐ先輩゙になったんだと思った。