風にキス、君にキス。
付き合ってるの?
そう聞かれて、「うん」って答えられることが幸せなんだ。
日向はあたしのものだって…
傍にいて、って…そんな我が儘を言えることが幸せなんだ。
だからもっと…もっと。
そう願ってしまう。
「…っ」
「柚…」
誰もいない道の上。
…日向と重なった影が、はっきりと見えた。
それだけで、もう何も要らなかった。
「っ…?ひな…た?」
「…これ以上は、やめとくな」
ほんの少しの距離を保っていた唇が、そう呟いて。
静かに…離れた。
「…え…?」
「取り返しが…つかなくなるから」
そう微笑んだ日向の瞳は…あたしには見えない何かを、静かに見つめていた。
「日向…?」
――――゙取り返しがつかなくなるから゙
…その言葉の意味は、日向の精一杯の優しさだったのだと。
気付くのに…そう長い月日は掛からなかった。