風にキス、君にキス。
拓巳Side
異変
「基礎メニュー、もうちょい追加するぞ!」
「ウォーミングアップで力入れすぎんな。体を暖めることが目的なんだから」
後輩に構ってばかりもいられない時期が近付いてきた。
…最後の、大会。
ようやぐ三年゙になったのだという実感が沸々と湧いてきた時になって、もう引退との距離が近いことに気付く。
(前の先輩達とは違い)引退したら、完全に受験勉強に打ち込むつもりの俺には…もう本当に走るのはこれが最後だ。
そして…
「日向先輩、キツいっすよー…」
「…ん、なら少し休憩」
…日向に、とっても。
「…なんか実感湧かないんだよな」
「だな。…俺もだ」
自分達が引退するという実感が湧かない。
…たまたま二人きりになった部室で、休憩しながら日向と話をしていると。
日向は肘を軽く机に付き、手のひらに広げたタオルに細い顎を乗せた。