風にキス、君にキス。



柚の視線の先を辿れば、そこには変わらない日向の姿があるわけで。



…どうして柚がそんな目をするのかは、分からなかった。





「柚…?」


「…気の、せいかな…?」


「え…」


「ごめんね。何?」



柚が慌ててそう言ったから、安心した。



…だけど心は焦っていた。



何かが不安で。


不吉で。




…千切れたこの紐を、一刻も早く繋いでおきたかった。



「靴紐ね。あるよ」



柚はそうぎこちなく微笑んで、ジャージのポケットの中から小さな缶を取り出して。



「はい」と手渡してくれた。




「サンキュ」



…早く、繋ぎたい。



今ならまだ間に合う気がした。



繋いでしまえば、今感じているどうしようもない不安も全て…


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