風にキス、君にキス。
俺の声に、近くにいた一年のマネージャーも「どうしたんですか!?」と反応して。
…筋トレをやっていた一年達も、俺達の周りに集まってきた。
「柚マネージャー…?」
「おい、柚!」
柚は何も言わず。
瞬きも忘れたかのように、視線を日向に向けたままで。
…俺達も、日向の走る様子に目を向けた。
「っ…?」
――――…どうしてだか、分からない。
ただ、目の前のグラウンドを駆け抜ける日向を見つめていたはずなのに。
…何故か俺の目の先に映ったのは、初めて会った時の日向だった。
一年の夏に…グラウンドを駆け抜けた日向だった。
…夏の大会で、誰よりも早くゴールを切った日向だった。
――――「陸上部なら、よろしくな」
――――「日向。相原…日向。」