風にキス、君にキス。
「あ、だめ。お菓子食べる前ばいただきまずでしょっ」
「…細かいっての」
「細かくない!ちゃんとやるのっ」
小学生になってからも、柚は妹的存在だと思ってたのに。
…いつの間にか、俺が柚に怒られることの方が増えてたな。
「わ…あの子、走るの速い…!」
「俺の方が速い。」
知ってんのか?
…いや、バカだから知らないだろうな。
お前が走り速い奴のことを「格好いい」だの「凄い」だの言うからさ。
嫉妬して、すげー頑張ったんだけど。
「柚っ」
「…何よ、日向っ」
「競走しようぜっ」
「やだよ…日向、速いんだもんっ」
…なんでもいいんだ。
同じ道を走りたい。
俺がちゃんと、柚の速さに合わせてやるから。
…そう思ってたけど。
「あたしは走らないよ」