風にキス、君にキス。
藤島の風、と呼ばれていることは知っていて。
悪い気はしないし、いやむしろ有難いことだと思う。
…けど、別にいい。
俺なりの"風"になれるのなら。
そしてそれを、柚が見ていてくれるのなら。
…そう考えて、いつも地面を走るから。
「授業終了っ」
チャイムが鳴り響いたと共に、俺は席を立ち上がった。
…一刻も早く、長く走りたい。
「こらっ相原、まだホームルームが…」
「いーだろ?いい天気だしさ、早く走りてぇんだよ」
呆れる担任と、笑うクラスメート達。
その中で、「全くもう…」という目を向けてくる柚。
いつまでも、こんな日々が続けばと願う自分がいる。