風にキス、君にキス。




ずっと…ずっと、陸上は孤独な競技だと思ってた。



個人だし。



自分がいかに早く走れるかが問題な訳だし。




…でも、違ったんだ。



゙一人じゃない゙



それだけのことで…心はこんなにも穏やかで、優しくて温かい。





「位置について…」





スタンディングスタートで、しっかりと体を構えて。



ひたすら前を見る。



…それだけだ。








――――パンッ…!





音が鳴り響いたその瞬間、駆け出した。



足が軽やかに動くことが幸せで



だからこそ何かを掴みたくて



…ひたすら前を向いて駆け抜ける。



ふとした瞬間、体の力が一気に楽になって



゙風に溶け込む゙。




この感覚が好きで仕方がない。



…だから俺は走ってるんだ。


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