風にキス、君にキス。
当然アスリートという夢はあっても。
…ずっとこのグラウンドで、この陸上部で、この学校で走り続けていたいという願いもある。
「…はー…」
誰にも気付かれないため息を、静かについた。
…陸上を始めてから、一瞬一瞬に敏感になったのかもしれない。
「日向?」
「…ん?悪い、ぼんやりしてた」
「ホームルーム終わったよ?部活行かないと」
「ああ」
俺を促してから、ふと窓の外に目を遣った柚は笑顔になった。
「本当に、綺麗に晴れてるね」
「…だよな?」
大会の日も、これぐらい晴れたらな。
そう笑う柚を見ると、愛しさが増した。