風にキス、君にキス。
「藤島学園陸上部三年、輝崎拓巳」
「はい」
「男子800m中距離部門、優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
拍手に包まれて、賞状とトロフィーを受け取る。
三位入りした大地も、準優勝の賞状を貰った。
…手にした瞬間、全てが終わったのだと。
そう…思った。
…けど。
「では…何か一言」
「は?」
「三年ということは、引退する前の最後の大会だろう?何か一言を…」
人が好いんだか悪いんだかよく分からない(多分教育委員会の)おっさんは、そう微笑んで俺にマイクを手渡した。
「はあ…?」
そう言われても…
…俺はマイクをとりあえず受け取りながら、首を傾げる。
朝、言いたいことは言ったし…
…走り終えたし…
俺は充分に引退したんだけど…
「…!」