風にキス、君にキス。
そう笑った日向の、白いシャツが夕陽に照らされて眩しくて…
少し目を、細めた。
「いーから。行くよ」
「…よし!」
「よーい…ドン!」
軽く、走り出した…その時。
…あたしは見た。
――――足取りは凄く軽いのに、あたしの横をすっと通り抜ける…その走り姿を。
後ろ姿はやっぱり透明な風だった。
スピードが落ちていても…やっぱりそれには変わりなくて。
そしてこれからも変わらないのだろう。
…思わず、足を止めていた。
「柚?すぐ止まってどうすんだよ」
―――その呆れたような微笑みが
「…やっぱり日向には勝てないなって」
「そりゃな。百億年早い」
――――憎まれ口を叩きながらも、いつまでも優しいその瞳が
「…柚?」
あたしはあなたが、大好きです。
本当に…大好きです。