風にキス、君にキス。
競技場の赤茶色をした地面は、太陽の光を受けてじりじりと熱く見えた。
「藤島学園、陸上部代表者」
「はいっ」
確認のために点呼されて、隆史部長とあたしが本部に向かった。
「ここに記入」
「はい。…柚ちゃん、ペン」
「これですっ」
先輩が、出場者名簿にチェックを入れ終わった時。
…いつも、"あぁ始まるんだ"と実感して緊張してしまう。
あたしが走る訳じゃないのに、一人一人がフィールドを駆け抜けるたびに激しく緊張感が募る。
「皆の色のイメージって、どんなのかな」
スタンドに座って、出場を待っている間。
…ふと、そんな話題になった。
「んー…考えたこと、ないですね」
他校の選手の特徴や記録を書き留めるから、あたしの手は忙しい。