風にキス、君にキス。
あたしの心に秘めていた答えと、まさに一致したものが声として聞こえた。
…あれ?
あたし、声に出して…
「色が無い訳じゃなくて、透明。
…透明が、日向の色のような気がする」
隆史先輩だった。
…やっぱり部長は、例えどこか抜けてる呑気者でも…皆には見えない何かを見つめている気がする。
「透明かぁ」
「言われてみれば…な」
「日向の周りって、透明感のある風だよな」
口々に納得する部員達に混じって、頷いた。
「あ、あたしもそう思います!」
「だろ?」
にっと笑った隆史先輩が、日向の肩を軽くつついた。
「な?日向」
「…は?何がですか?」
「またまた。聞いてたくせに」
「大会直前にもなって全員呑気すぎだっつの…」
そうは言うものの、日向の頬はほんの少し赤くなっていて。
…ちょっとした宝物を、見つけたような気がした。