風にキス、君にキス。




「中距離部門出場者は、本部の前に…」


「お、行ってこい」



放送が聞こえると、隆史先輩が微笑んで日向の背中を押した。



「言われなくても行きますよ」


「…本当に生意気だな。



お前らも…頑張れよ」


「はいっ」



他の中距離部員も、微笑んで頷いた。



「頑張って下さい…!」



あたしも立ち上がって、一人一人と目を合わせる。



「ん。柚ちゃんのために頑張るよ。…なんて」


「ありがとな、マネージャー」


「任せろ!」



口々にそう笑ってくれる皆を見て、胸の奥が熱くなる。



ここにいて良かったと、一番そう思える瞬間。




…だけど、一人だけ何も言わない人がいた。






「…日向?」



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