風にキス、君にキス。
そう聞いた俺に、隆史先輩が少し悪戯っぽく笑った。
「日向のタオル握り締めたまま、走ってどこかに行っちゃったよ」
行っちゃった、って…
「追い掛けてくればぁ?」
「多分あの体育館の裏とかだろ」
他の奴らもそう腕組みしたまま、ニヤニヤしている。
「…」
「お姫様を迎えに行ってあげなよ」
「うっせぇな、わーったよ」
…言われなくても分かってるっつの。
拓巳にそう返して、俺はひたすら柚の行きそうな所(陰、その他地味な場所)を探しに掛かった。
「…世話の焼ける奴…」
人のタオル持って、勝手にいなくなってんじゃねぇよ…
…まだ、言ってないことがあるんだから。