風にキス、君にキス。
そう小さく笑ってから、付け足した。
「…地面と風があればいーから」
「陸上バカ。」
「バカ。」
「なっ…ストレートに言われると、本当に腹立つっ」
些細な会話でさえ、幸せだと感じた。
柚が可愛くて…すげー可愛くて。
「あ、日向」
「ん?」
「あのね…」
柚が少し照れ臭そうに何かを言おうとした。
――…その、時だった。
「…っ!」
ギュイイイイイイイイインッッ!
――――突然、乱雑な音が響いて。
明らかに走り方のおかしいトラックが、突っ込んできた…のは。
「え…?」
…何、飲酒運転?
そんなことを考える余裕もなく。
「…っ、柚っ!」
「っっ!」
咄嗟に柚を背中に庇った。