風にキス、君にキス。
――――キュイイイイイイッ……!!
「日向…っ!」
車の進入が禁止されているはずの歩道に、俺の逃げる余地はなく。
逃げたい。
それなのに、逃げられない。
…次の瞬間には、全てが反転し。
強く体が跳ねとばされ、踏みじられる衝撃。
……それも、一瞬のことだった。
なんでこんな酷なことも、同じ一瞬で片付けられるのかも分からないうちに…
「っ…」
痛みとか、苦しみとか…そういう次元ではなく。
ただ…体に力が入らず。
…少しずつ、全てが失われていく感覚だけがあった。
体が…麻痺していく。
「ひな…たぁ…っ」
景色が見えなくなっていく。
柚の…顔も。