風にキス、君にキス。
何時間でも待てる。
…日向が、帰って来てくれるなら。
「お母さん…」
「…柚?」
「日向…助かるよね?絶対に、助かるよね…?」
「ゆ…」
お母さんにそんなこと言ったって、困らせるだけだとわかっているはずなのに。
もう…何が正しいのかも、わからない。
「っ、柚ちゃん!」
「柚!」
幾つも重なる声に、ゆっくりと顔を上げると。
…隆史先輩を始めとする陸上部員達が、いた。
「皆…」
「…日向は?」
静かな質問に、ゆっくりと首を横に振ると。
…雄大先輩の顔から、血の気が引いて。
「っ、雄大!」
止められるのも聞かずに、手術室の前へと駆け出した。
「待てよっ、落ち着け!」
「日向っっ…!
頑張れよっ!頑張ってくれよ…っ!
うぅ…っ、あ…」
「落ち着けって言ってんだろ、バカ…!」