風にキス、君にキス。




何時間でも待てる。




…日向が、帰って来てくれるなら。






「お母さん…」


「…柚?」


「日向…助かるよね?絶対に、助かるよね…?」


「ゆ…」



お母さんにそんなこと言ったって、困らせるだけだとわかっているはずなのに。




もう…何が正しいのかも、わからない。





「っ、柚ちゃん!」


「柚!」



幾つも重なる声に、ゆっくりと顔を上げると。



…隆史先輩を始めとする陸上部員達が、いた。



「皆…」


「…日向は?」



静かな質問に、ゆっくりと首を横に振ると。




…雄大先輩の顔から、血の気が引いて。



「っ、雄大!」



止められるのも聞かずに、手術室の前へと駆け出した。



「待てよっ、落ち着け!」


「日向っっ…!



頑張れよっ!頑張ってくれよ…っ!



うぅ…っ、あ…」


「落ち着けって言ってんだろ、バカ…!」



< 66 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop