風にキス、君にキス。
薄れぬ想い
――――――
――――
…空は、皮肉なぐらいに晴れていた。
まだこの世界は君を、知らないのだろうか。
「…いい天気、だな」
「…」
雲一つない青空を見上げると輝く太陽の眩しさに目を細めた。
「晴れてる…」
「…柚?」
「…日向がいるから太陽があるんだ、なんて思ってた」
でも…違うんだね。
あたしはグラウンドを整備する手を休めないまま、静かに続けた。
「1日は24時間で、太陽は朝に昇って夕方に沈んで…夜が明ければまた昇る」
風は吹き、花は揺れ。
この地面は人を支え。
あたし達は、同じ時間の流れの中で生きてゆく。
――――…例えそこに、君がいなくとも。
「柚…もういいから、休めよ」
「…」
「柚!」
拓巳はあたしを抱き締めるようにして、作業を止めさせた。
「…っ」