風にキス、君にキス。
「…また、来るね」
「おう。…ありがとな」
先輩達に続いて病室を出る前に、あたしは日向にそう微笑みかけた。
…そして、そこでやっとお見舞いの花を持って来たことを思い出した。
「あ、忘れるところだった」
「…ん?」
「これ…」
あたしが選んだ、赤くて小さな花をたくさんつけた鉢。
日向に差し出して、「ゼラニウム。小さい花が次々と付くの」と説明した。
…選んだ理由は、言おうとしたけどやめた。
「水、あげてね」
「俺よりもお前…柚、に似合ってるけどな」
日向は少し苦笑いして、花を受け取ってくれた。
「確かに日向には可愛すぎるかも」
「な?」
「またね」
泣かない。
日向がいるから…もう、泣かないよ。